2度目の「羊と鋼の森」。心と体に染み込む音と映像はやっぱりよかった。
原作の宮下奈都さんの五感に訴える言葉と世界感が、そのまま映像に映しだされている映画。ピアノと対峙し格闘する、ピアノ調律師の主人公、そのまわりの人の感情がとても丁寧に描き出されていて、ひとつひとつの言葉が、表情が、情景が心に染み入ります。
ピアノの音と重ねられた自然の風景。季節や感情、その場の空気感をそのままに表現する色と光のコントラスト。画面いっぱいに映し出されるピアノのハンマーや鍵盤。どれもが最高に素晴らしく、スクリーンと自分が一体化するような感覚におそわれました。
主人公が憧れの大先輩に、理想とする音はどんな音を聞く場面があります。
大先輩は、詩人の原民喜が憧れている文体のような音にしたいと。その言葉が実によかった。
明るく静かに澄んで懐かしい文体 少しは甘えているようでありながら 厳しく深いものをたたえている文体 夢のように美しいが現実のように確かな文体
原民喜「砂漠の花」より
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